アイムホーム
振り上げた手をそっとしまっちゃうおじさん出てきてください。
うちの奥さんは出産後しばらく実家に帰っていたので
その期間久々の一人暮らしをしていたのですが、
ある日、奥さん宛にピンク色のA4サイズの封筒が
届いていた。
どこからの郵便なんだろうと思い
封筒の裏側に目をやると、送り主は
「一般社団法人 遺伝子検査協会」
という団体であった。
DNA鑑定したんじゃないか。
この団体がどういうものなのか知らないけど、
名前から察するに、これはDNA鑑定の結果の報告書か何かではないか。
何ということだ、
つい昨日まで「僕にそっくりだねー」とか話していたのに、
息子は本当は僕の子ではないとか、
そういう昼ドラ的な展開が僕の知らぬ所であっているのか。
開けようかどうしようか。
この封筒を開け、中を見てしまえばすべてが分かるんだけど、
もし本当に報告書だったとしたら、
僕はその結果に耐えられるだろうか。
ネットで検索してみた。
結局、封筒を開けるのが怖くなってしまい、
まずはこの団体がどこの誰なのか調べるために、
ネットで検索をしてみた。
『子どもの潜在能力、遺伝子検査で発見!!』
え?
なんか思っていたのと違う。
子どもの口の中の細胞を綿棒で採取してこの団体に郵送すると、
1~2ヵ月後にその子がどんな才能を持っているかどうかが
わかるんだそうだ。
だそうなのでDNAは鑑定しているのかもしれないが
僕が想像していたドロドロしたDNA鑑定とはまるで違う。
その検査にかかる費用が、64,800円とのこと。
これはなかなか高い。
こないだ僕が30,000円くらいの空気清浄機を買おうとしたときは
散々色々調べるべきだうんだかんだと言っていたのに
その倍もする遺伝子検査を申し込むとはこれ如何に。
ここは一つ、大黒柱の威厳とやらを見せるため
ガツンと言ってやろうじゃないか。
そう思い、封を開けずに奥さんのところへ持っていった。
「これどうしたん?『遺伝子検査協会』ってとこから来てるけど?」
「え、何それ?全然知らんよ」
しらを切るか。
なるほどなるほど、そう来るか。
それならばすべてを白日の下にさらし、
勝手に申し込んだことを指摘してやろうと
ピンクの封筒の封を空け、中身をバサッとテーブルの上に拡げた。
ダイレクトメール。